からすこの日記

わたしの大好きな本や映画について紹介するブログです。インターネットの片隅から愛をさけぶ!

『にじいろガーデン』 小川 糸

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◯あらすじ

三十代半ばの高橋泉は、別居を続ける夫との行き詰った関係に苦しんでいた。
仕事帰りのある日、泉は駅のホームで女子高生の島原千代子と出会う。
千代子は自由な生き方を認めない両親との関係に悩み、命を絶とうとしていた。
心の痛みを分かち合ううち、ふたりは恋に落ちる。お互いをかけがえのない
存在だと気付いたふたりは、泉の一人息子・草介を連れて、星がきれいな山里
マチュピチュ村」へと駆け落ち。泉と千代子の苗字をかけあわせた“タカシマ家"の誕生だった。
やがて千代子は、泉と出会う前に関係を持った男性の子どもを出産。
宝と名づけられた長女が加わり、一家は四人になる。
ゲストハウス開業、念願の結婚式&ハネムーンツアー、千代子の闘病、そして……。
喜びと悲しみに彩られたタカシマ家十六年間の軌跡を辿る、新たな家族小説の誕生。

 

インターネットで著者の小川さんがこの作品について語った記事がありました。

【著者に訊け】家族のあり方問う小川糸『にじいろガーデン』│NEWSポストセブン

 

ひとそれぞれで感じ方はちがうものなので、色んな意見があっていいと思います。

わたしはずっと、いいなぁと思っていました。視線が優しくて、あったかい。

 

ちょっと脱線してしまいますが、アメリカではパトリシア・ハイスミス作「キャロル」(ケイト・ブランシェットルーニー・マーラを主人公に映像化された作品です)が文学の世界の一つの扉を開いた、と言われているそうです。当時、作者のハイスミスは作品に感激した多くの読者から熱心なファンレターをもらいました。その後、社会の状況とも相まって、アメリカでは多くの作品が生まれていきます。

ほんとに素人の意見ですが、想像力はやっぱり現実と切り離せないものかなと思います。だから一番遠い場所にいるときというのは、想像ができないとき。

そういった意味で、この『にじいろガーデン』という作品があること、これはすばらしいことだなぁと思いました。中高生だったときにジョディ・フォスターやエレン・デジェネレスといったカッコいい人たちのことを知って嬉しかったのと似ていますね。

個人的には冒頭の場面がとても印象的でした。

千代子は命を絶とうと駅のホームに立っていましたが、思いかけずふいに現れた男の子の手をぎゅっと握ります。後にその男の子は草介であると分かります。ぎゅっと握った手のぬくもりに、千代子は涙します。その出来事が千代子を命の淵から救いました。

だれかの温もりで救われる、そんなことが有りました。言葉ではできないことです。そんな温もりが増えるのなら、どんなかたちだっていいよな、と感じています。

 

 

祭りのあと。

先日訪れた映画祭の後、これは心のうちに閉まっておこうかな~と思っていましたが、おしゃべりなので結局ある友人に熱く語っていました笑

その人とは個人的な話を深くしているわけではありませんが、きっと面白がって聞いてくれるだろうと思ったからでした。その友人はアメリカ旅行中にゲイの友達ができたり、日本でもいわゆるLGBTQ+のイベントに参加したりしている人で、映画祭のことも楽しく話せました。

人として懐が深い、っていうのはすてきだなぁと思いました。そういう姿勢でいてくれる人がいるのはほんとに心強いし、いつか自分が大切な人に出会えたときに、きっと祝福してくれるだろうと思います。

 

以上つぶやきでした・・・

映画「姉妹関係」

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関西クィア映画祭にて「姉妹関係」を見てきました!

とってもいい作品でした。見れて良かったなぁ。

◯あらすじ

1999年のマカオ返還の日、周りが喜びに沸き立つ中、セイは、リンから突然の別れを伝えられた。リンの子ロクをふたりで共に育て「ずっと一緒にいよう」と想い合っていたのに、なぜ?
リンの死を知り、15年ぶりに故郷マカオを訪れたセイ。マッサージ嬢として働いていた当時の仲間や、青年になったロクに再会する。貧しくもたくましく生きてきた青春の日々。あなたはあの時何を考えていたの?—真実を知ったセイは、もう一度自分の道を選び直す。

 

主人公のセイをはじめマッサージ嬢として働く彼女たちの力強さ、たくましさがすごくかっこ良かったです。カラオケの様子から分かる通り、ほんとにキラキラしてます。みんなけんかっ早いし無茶なところはあるけど、仲間のことや大切な人を思う気持ちは本当で、それがじーんと来ました。ぼろぼろ泣いてました笑。

セイとリン、二人の強い絆を感じました。かけがえのない人に出会うって、本当にすてきなことですね。

日本での上映はこの関西クィア映画祭と、大阪アジアン映画祭のみだったみたいです。また見たいけど、当分むりかなぁ。一期一会ですね。ほんとに良い出会いでした。関西クィア映画祭のみなさん、ありがとうございます!

"Dear Taylor" by Eija Jimenez

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○あらすじ

Taylor Phillips was working as a barista in NYC the day the twin towers came crashing down. Seeing her city in shambles, coated in ash, and American lives lost, she enlisted to fight the War on Terror. Daniella Melo, a Rhode Island American History teacher, challenges her class to write letters to soldiers fighting overseas. With one name left and a student short, Daniella takes it upon herself to write letters to Private Taylor Phillips stationed in Afghanistan. Over the next two years, the women exchange letters, sharing stories of their daily lives: Daniella trailing after her rambunctious daughter, Jackie, and dealing with overeager seniors planning prom while Taylor trudges through sand and dirt, driving her humvee in cold deserts. Their friendship continues to grow until it becomes something so much more than either women expect.

 

Taylorはニューヨークでバリスタとして働いていましたが、9.11テロをきっかけに軍隊に入隊します。アフガニスタンに駐在しているとき、軍人とのペンフレンドプログラムを通じて、地元の学校で歴史の教師としてはたらくDaniellaから手紙を受け取ります。Daniellaは教師を務めながら養子のJackieのシングルマザーとして毎日慌ただしい日々を過ごしています。二人は手紙を交換しはじめ、やがて絆が芽生えていき……

 

とても心の温まる家族の物語です。TaylorとDaniella、そして愛すべきJackieが少しずつ少しずつ互いにとってかけがいの無い存在になっていきます。三人の微笑ましい姿が目に浮かんで、ほんといいなあと思いました。

 

個人的には、手紙は大好きです。そんなに手紙を書く用事もないのに、かわいい便せんを見つけてはつい買ってしまいます。手紙がきっかけとなった心に残る思い出もあったりして、誰かに何か伝えたくなった時、いつでも手紙が書けるようにしておきたいなーと思っています。

物語は序盤、TaylorとDaniellaが互いに送った手紙が中心となって進んでいきます。DaniellaはJackieのいたずらのことや学校のプロムのことなどを書いて、戦地にいるTaylorに笑顔を届けます。Taylorも文章を書くのは苦手でも、誠実で心のこもった手紙を送ります。文章を読んでいても、二人が本当にお互いを大事に思っていることが伝わってきます。寂しいときに誰かから温かい手紙をもらうのって良いですね。

 

これはLetters to warシリーズの第一作で、第二作"Sincerely Daniella"がすでに出版されています。まだ読んでません笑。楽しみです!

「加瀬さん。」シリーズ 高嶋ひろみ

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「加瀬さん。」シリーズ!

○あらすじ

隣のクラスの加瀬(かせ)さんは、陸上部のエースで美人の女の子。
内気な緑化委員の山田(やまだ)は、
彼女が世話しているアサガオの前で加瀬さんに声を掛けられて! ?

ピュア百合アンソロジー「ひらり、」から生まれたコミックス第1弾。
「未満れんあい」「ツインバード」の高嶋ひろみ先生が描く、
ピュアピュアでドキドキのGIRL'S LOVEストーリー!

 

宝物、です。出会えてほんとによかった!

とっても面白かったので、百合は読まないけど漫画好きな仲の良い人に、自分がちょっと男の子っぽいと思われてるだろうな、と思うとちょっと照れくさいというか、恥ずかしい気持ちはしたけれどおススメしてみました。

すると一時間もしないうちに全巻読破して「尊すぎる、大好き・・・」ってなってました。大成功ですね!

山田と加瀬さんを見ていると、元気がもらえるし、幸せな気持ちになれる。何度も読んでいるのにニヤニヤするし、おんなじところで大笑い。漫画はあんまり読まないので詳しくないですが、こんな作品は滅多にないんだろうな。感謝感謝!

 

個人的には加瀬さんの山田愛があふれでているところが好きですが、アニメーションクリップの監督をされた佐藤さんがインタビューで言っていました。

 「加瀬さんの人気の理由って少年っぽさにあると思うんです。それは僕が思うカッコいい女性像とはちょっと離れてるというか。むしろ素直でかわいいところが加瀬さんの魅力だと思ってます。山田と話してるとき、うれしさや恥ずかしさが表情に滲み出てしまうところとか……違いますかね?」

その通りですね。このインタビューもアニメーションクリップを製作した方たちの熱い思いがびしびし伝わってくるので是非!

natalie.mu

 

山田と加瀬さんの二人の姿をずっと見ていたいな〜と思います。大学生になっても、社会人になっても、おばあさんになっても。

 

ぜひどうぞ!

"Colorblind" Siera Maley

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今回はSiera Maleyさんの"Colorblind"です。

学生なので夏休みはたくさん本を読んでいましたが、だれかに読んでほしい!と思った小説にはやはり、滅多に出会いないものですね。ご縁を大切にしたいです。

 

○あらすじ

Harper has a secret... and it’s not that she likes girls. She has a rare and special gift: she can see how old other people will be when they pass away. Nothing she does changes this number, and that becomes especially clear when her mother dies in a car crash. With only one other person in the world who knows about and shares her gift, Harper is determined to keep her distance from everyone. Then she falls for Chloe… whose number is 16.
That means that Chloe doesn’t have twelve months to live. She doesn’t even have six.
She is going to be dead by the end of the summer, unless Harper can find a way to stop it.

 

この"Colorblind"の主人公Harperの秘密は、他人が死ぬ年齢が見えてしまうことです。Harper自身の能力ゆえに、彼女は他人と関わるのを避けてきました。ところがある日、十六歳の魅力的な女の子Chloeに出会い、彼女の生活が一変します。実はChloeの死は十六歳で…。

「もしもいつか永遠に別れる日がくることを知っていたとしても、あなたは愛することができますか?」

 

Herperは彼女の母親との別れを経験していて、Chloeの人生に近づきすぎるあまり自分が深く傷つくことを恐れてしまいます。Chloeは対照的でアドレナリンジャンキー、怖いもの知らずで今を楽しむことが一番!な女の子。初めての恋の感情を丁寧にえがいていて、きゅんっとします。二人の会話もとってもおもしろい!HerperはChloeに出会ったことで、痛みも別れもある人生のなか、大切なものを失わないように、最後の瞬間に後悔しないように生きることの大切さを学びます。Chloeがけっこうグイグイくる子で、おくてな自分はいいな〜なんて思いました。

 

サンフランシスコを舞台にした風通しの良さもいいです。あるブログのこの本の感想で書いてあったのですが、このジャンルの中高生向けの本でよく描かれる、セクシュアリティに関して登場人物が悩む、といったところがないのも爽やかで良いなと思います。HerperとChloeは自身のセクシュアリティについて自然な感情をもっていて、家族とも良好な関係をもっています。日本でこういった作品が出版されることが少ないので、ちょっと残念だなと思います。アメリカ文化のすべてを肯定するわけではありませんが、ニューヨークやサンフランシスコといった地域のもつ、いろんな人がいること、という文化にはあこがれます。

 

よかったら是非!

「白い薔薇の淵まで」 中山可穂

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○あらすじ

ジャン・ジュネの再来とまで呼ばれる新人女性作家・塁と、平凡なOLの「わたし」はある雨の夜、書店で出会い、恋に落ちた。彼女との甘美で破滅的な性愛に溺れていく「わたし」。幾度も修羅場を繰り返し、別れてはまた求め合う二人だったが……。すべてを賭けた極限の愛の行き着く果ては? 第14回山本周五郎賞受賞の傑作恋愛小説。発表時に話題を読んだ受賞記念エッセイも特別収録。

 

新人女性作家・塁と会社勤めのクーチという二人の女性の恋の物語です。

こんなにも取り憑かれたように本を読んだのはいつ振りだったかな、と思うくらいでした。

実は冒頭の場面から、ぐっと引き込まれていました。こんな文章があったからです。

 『普段ならめったに読まないような山本周五郎室生犀星なんかを、揚げたてのコロッケや残り物のカレーを恋しがるみたいに欲していた。』

クーチがニューヨークで紀伊國屋書店を訪れた場面での一文。

室生犀星はわたしの大好きな詩人で、この本を読み終えたときに室生犀星のある詩を思い浮かべました。

「永遠にやってこない女性」

秋らしい風の吹く日
柿の木のかげのする庭にむかひ
水のやうに澄んだそらを眺め
わたしは机にむかふ
そして時時たのしく庭を眺め
しほれたあさがほを眺め
立派な芙蓉の花を讃めたたへ
しづかに君を待つ気がする
うつくしい微笑をたたへ
鳩のような君を待つのだ
柿の木のかげは移つて
しつとりした日ぐれになる
自分は灯をつけて また机に向ふ
夜はいく晩となく
まことにかうかうたる月夜である
おれはこの庭を玉のやうに掃ききよめ
玉のやうな花を愛し
ちひさな笛のやうなむしをたたへ
歩いては考へ
考へてはそらを眺め
そしてまた一つの塵をも残さず
おお 掃ききよめ
きよい孤独の中に住んで
永遠にやつて来ない君を待つ
うれしさうに
姿は寂しく
身と心とにしみこんで
けふも君をまちまうけてゐるのだ
ああ それをくりかへす終生に
いつかはしらず祝福あれ
いつかはしらずまことの恵あれ
まことの人のおとづれあれ

 

わたしがこの物語のなかで一番惹かれたのは、塁とクーチのお互いを求める切実さ、一所懸命さでした。真実のように感じました。勝手な想像ですが、塁がクーチと別れている時、この詩のように彼女のことを思って過ごしていたのかな、と思いました。

きっとこれから何度も読み返すんだろう、と思った格別な一冊でした。